組織再考ラボ(Re-Thinking Organizations Lab)

人を知り、組織を知る。本当の採用はそれから

人と組織への興味が導いた、キャリアの流れ

──今のキャリアを築かれた原点について、お聞かせください。

私は未来を逆算して歩んできたわけではなく、むしろ人生の流れに身を任せてきました。ただ、人と組織への関心は一貫していたと思います。哲学から心理学へと興味が移り、人の幸せや成長について考える中で、その関心を活かせる場として人事の道に進みました。

リクルートでの経験を経て、その後転職を重ねていく中で多くの気づきがありました。リクルートにいた頃は、そこが組織のすべてのように感じていましたが、他社での経験を通じて組織の在り方は実に多様だと実感したのです。時には正反対とも言えるほど異なる組織文化がある一方で、どの会社にも共通する普遍的な部分もある。それぞれの組織に魅力があり、もっと多くの組織づくりに関われないかと考え、独立しました。

40歳での独立・起業は、心理学者ユングの言う「人生の正午」のタイミングで、まさに第2ステージへの挑戦という気持ちでした。

リクルートの変革期に実践した未来志向の採用

──これまでのキャリアのなかで、最も印象に残っている体験についてお聞かせください。

32歳から6年間務めたリクルートでの採用マネージャー時代です。当時採用した方々は、現在リクルートの役員や部長として、また上場企業の社長として活躍されています。

2002年から2009年頃は、リクルートの大きな変革期でした。紙媒体からデジタルへの移行、純日本企業から海外売上が半分を占める企業への転換、そして事業の自社開発モデルからM&Aによる成長モデルへと変貌を遂げていった時期です。この時期に10年、20年先を見据えた人材を採用できたことが、今も私の基盤となっています。

こうした成功の要因は、採用を「今と今のマッチング」ではなく、「その人の未来と会社の未来のマッチング」として捉えていたことです。会社の未来を本気で信じて語れたからこそ、候補者と共に創る未来を描けたと思っています。自社のポテンシャルを本気で信じて候補者をアトラクトするのは採用の基本。そこが徹底できたと思っています。

採用へのコミットが組織の未来を決める

──組織開発において、採用の重要性をどのようにお考えですか。

組織づくりの成否は採用で大きく決まると考えています。次いで適材適所の配置が重要で、その後に育成や評価、報酬といった施策が続きます。

多くの企業は「採用に力を入れている」と言いますが、まだまだ伸びしろが多いと感じるところが少なくありません。一つの指標として、採用担当者の人数比を見てみましょう。例えばリクルートでは年間採用10人に対して1人の専任担当者を配置していました。300人の採用なら30人のコアメンバーが必要という計算です。

これだけの体制が必要なのは、自社が真に求める人材へ積極的にアプローチするためです。採用に十分なリソースを投じない企業の多くが、後になって様々な課題に直面します。本来は優れた事業を持っているのに、人材面で成長の壁にぶつかってしまう。大切なのは、自社に来てくれそうな人材から選ぶのではなく、本当に必要とする人材に自ら働きかけ全力を注ぐことだと考えています。

採用成功の土台となる組織の見立て方

──そんな採用を成功させるために、組織としてどんな準備が必要でしょうか。

組織における人材の現状と理想のギャップを明確にし、それを埋めていくのが採用の役割です。そのためには2つの重要なポイントを押さえる必要があります。「今、どんな人たちで組織が構成されているか」を能力、性格、価値観の観点から把握すること、そして「どんな組織にしたいのか」という理想を定めることです。

こうした組織の見立てを進めるにあたって、推奨したいのが全社員への性格適性検査の実施です。多くの企業が採用時のみ実施していますが、現職社員全員への実施例は少なく、性格や価値観については可視化されていないことが多い。

結果をクラスター分析で分類し、職種ごとの分布や組織内のパフォーマンス比率を確認することで、組織の実態が見えてきます。主観的な理想像と実際に活躍している人材は、意外なほど異なることが多く、こうした現状把握が採用成功の第一歩となります。

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